はじめに:その「見えない壁」の正体を知っていますか?
大切な、外国人の友人や、会社の同僚。
日本での新しい生活に胸を膨らませている彼らのために、一緒に部屋探しを手伝っている。なのに、なぜ。
内見ではあんなに好感触だったのに、いざ申込書を出すと、返ってくるのは「すみません、今回は…」という、曖昧な断りの言葉。
「どうして、ダメなんですか?」
そうまっすぐに聞く彼らの、不安そうな顔。
あなたも、悔しくて、もどかしくて、そして申し訳ない気持ちで、いっぱいになっているのではないでしょうか。
こんにちは。不動産と法律のライター、しおうです。
僕も、この「見えない壁」に、何度もぶつかってきました。
大丈夫。その壁の正体は、決して「差別」という、単純な一言で片付けられるものではありません。
この記事では、その壁の向こう側で、日本の大家さんが、一体何を考え、何を恐れているのか、その“本音”を徹底的に解説します。
そして、その不安を「安心」に変えるために、サポーターであるあなたにしかできない、具体的なアクションを、一つひとつ一緒に見ていきましょう。
大家さんが、実は恐れている「3つのリスク」
まず、大前提として、日本の大家さんの多くは、差別主義者ではありません。彼らは、自分の大切な資産を守ろうとする、ごく普通の「事業家」です。
そして、事業家として、彼らが最も恐れるのは「未知のリスク」なのです。
リスク①:言葉と文化の壁という、見えない不安
これが、一番大きな壁かもしれません。
大家さんの気持ちとしては、悪意ではなく「悪意のない、すれ違い」です。
- 「ゴミ出しのルール、分かってもらえるだろうか…」
- 「夜中の騒音で、他の住人からクレームが来たら、どう伝えればいいんだろう…」
- 「契約書の、あの細かい日本語の条項を、本当に理解してくれているだろうか…」
もしトラブルが起きた時、言葉が通じず、文化的な背景も違う相手と、果たして円満に解決できるのか。その「未知」こそが、彼らを躊躇させる最大の原因なのです。
リスク②:家賃滞納と、保証という名の「最後の砦」
次に、お金の問題です。これは、日本人であろうと、外国人であろうと、大家さんが常に抱えるリスクです。
しかし、相手が外国人の場合、そこに、一つだけ、特殊な不安が加わります。
それは、「もし、家賃を滞納したまま、母国に帰ってしまったら…?」という、恐怖です。
そうなった場合、家賃を回収する術は、法的にも、実質的にも、ほぼ皆無に等しい。
だからこそ、彼らは「何かあった時に、日本語で、確実に連絡が取れて、責任を取ってくれる、日本人の『連帯保証人』」という、最後の砦を、何よりも重視するのです。
リスク③:退去後の、金銭的・時間的コスト
無事に住み終えたとしても、まだ安心はできません。
もし退去時に、部屋に大きなダメージが残っていたら?あるいは、大量の私物(残置物)が、そのまま放置されていたら?
日本人であれば、実家や勤務先に連絡を取ることもできます。しかし、相手が外国人で、すでに帰国してしまった後では、その修繕費用や、残置物の処分費用を請求するのは、極めて困難です。
その全てが、大家さんの「泣き寝入り」になってしまうリスクを、彼らは常に考えています。
不安を「安心」に変える。サポーターのあなたにしかできない、3つの魔法
彼らの不安の正体が分かれば、私たちのやるべきことは、明確です。
その一つひとつの不安を、具体的な「行動」で、先回りして、潰してあげる。
それこそが、サポーターである、あなたにしかできない「魔法」なのです。
魔法①:あなたが、最高の「翻訳機」であり、最高の「ルールブック」になる
まず、言葉と文化の壁を、あなたの力で、取り払ってあげましょう。
- 【「日本の暮らし方マニュアル」を、プレゼントする】
ゴミ出しの曜日、騒音に関する注意点、部屋の正しい使い方…。そういった日本のルールを、あなたが、彼らの母国語と日本語を併記した簡単なリストにして、契約時に大家さんに「こういう形で、私が責任を持って伝えますので、ご安心ください」と、渡してあげるのです。 - 「最初の連絡は、必ず私に」と、宣言する
「もし何かあれば、まずは、日本語が完璧に通じる私にご連絡ください」と、大家さんに伝える。これだけで、大家さんの心のハードルは、劇的に下がります。
魔法②:最強の「保証」を、こちらから提示する
次にお金の問題。これも、先回りして、安心させてあげましょう。
- 「保証会社」の利用を、積極的に提案する
今や、日本人でも利用するのが当たり前です。「家賃の保証は、保証会社を使いますので、ご心配いりません」と、こちらから切り出しましょう。 - あなたが「連帯保証人」になるなら、その“覚悟”を見せる
もし、あなたが連帯保証人になるなら、申込書にサインするだけでなく、あなた自身の勤務先や収入を証明する書類を、自主的に「参考資料です」と提出する。その「覚悟」が、大家さんに、最高の信頼を与えます。
魔法③:完璧な「申込書セット」を、一緒に作り上げる
最後に、相手も人間です。書類が、その人の「人柄」を語ります。
- 【「自己紹介カード」を、添える】
申込書だけでなく、簡単な「自己紹介カード」を、日本語で、一緒に作ってあげる。「なぜ、日本に来たのか」「どんな仕事(勉強)をしているのか」「日本の、どんなところが好きか」。そんな、彼の人柄が伝わる一言が、ただの申込者を、一人の「応援したくなる、好青年」に変えます。 - 【必要書類は、神速で、完璧に揃える】
在留カードのコピー、収入証明、学生証…。求められた書類を、一日でも早く、完璧な形で提出する。その、仕事に対する「誠実さ」が、「この人たちなら、信頼できる」という、最後の決め手になります。
まとめ:あなたが、最高の「架け橋」になる
外国人の部屋探しが難しいのは、彼らが「外国人」だからではありません。
大家さんが、彼らのことを「知らない」からです。
そして、その「知らない」という不安と、日本で新しい一歩を踏み出したいという「希望」の間を繋ぐ、最高の「架け橋」。
それこそが、サポーターであるあなたの、本当の役割なのです。
この記事が、あなたが、その素晴らしい役割を果たすための、一つの「力」となることを、心から願っています。
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